”麦門冬湯”という漢方薬につきまして
10月1日に開業して今日で1か月たちました。開業前後の書類仕事なども一段落してきましたので、このブログの本来の目的である、医療的な内容を書いていこうと思います。
さて、今日話題に挙げる漢方薬は麦門冬湯という処方です。最も僕が処方する漢方薬の一つで、これから寒くなるとともに空気が乾燥してくるので、さらに処方が増えていくと思われますのでご紹介します。
さて、東洋医学には”乾湿”という概念があります。皆さんものどが乾いた、潤っている、という状態って何となくわかりますよね。まさにそんな状態を”乾湿”というイメージで表すのです。もちろん、西洋医学にも唾液分泌が減少するシェーグレン症候群という病気もありますが、これはかなり唾液分泌がしっかりと減少した状態であり、ちょっと乾いているといった状態に”病名”はありません。ちょっとのどが乾く感じ、空咳が続く時、こういった状況を”乾いている”と東洋医学ではとらえます。東洋医学というと難しそうに思えますが、意外とフツーの考え方なんですよ。
漢方薬はさまざまな生薬の集合体で、その生薬構成がその処方の特性を決定します。麦門冬という生薬は”潤す”作用が強く、日本で用いられる医療用漢方薬が149種類ありますが、そのなかで最も麦門冬を含んでいるのが、その名を冠する麦門冬湯です。ですので、乾いている病態の空咳やのどの渇き、などにはこの”潤す”作用の麦門冬湯がぴったりなのです。
麦門冬湯の特徴は、漢方薬にしては比較的甘みがあり、あまり苦みを感じません。僕が初めて飲んだ時の感想はトウモロコシの芯をかじった時のような風味だったことを覚えています。また、ある患者さんからは、有名なお菓子の「とん〇りコー〇」の味がする、と表現されていました。というわけで、初めて漢方薬を飲む方でも比較的ハードルが低いのでは、と思っています。
冬場に大活躍する漢方薬ですので、もしかしたら皆さんにも処方をするかもしれません。是非、苦くない漢方薬を”味わって”みてください。